個人診療所の院長およびその家族は被保険者となるのでしょうか

「今度、息子が長野に帰ってきて診療を手伝ってくれることになりました。社会保険(年金・健康保険)の加入はどうどうしたらいいですか」。「医院との契約があれば職員と同じように厚生年金にも加入できると聞いたのですが本当ですか」というお問い合わせがありました。

現院長は個人事業主で、職員は医師国民健康保険組合(医師国保)と厚生年金に加入しています。将来的にはご子息に医院を継承する予定ですが、医療法人にするつもりはないというお話でした。
個人診療所の事業主である院長およびその家族はどの制度の被保険者になるのでしょうか。

健康保険および厚生年金保険は、「事業所に使用される者」が被保険者

健康保険および厚生年金保険は、原則として、「事業所に使用される者」を被保険者とすることとしています。
そのため、個人事業所の事業主およびその家族については、通常、「事業所に使用される者」には該当せず被保険者になることはできません。
ただし、事業主の家族であっても、「以下の1~4にすべて当てはまることが書類等で確認ができたときなど、就労実態等により事業主と事実上の使用関係が明らかである場合は被保険者となる」として以下の4項目を定めています。
1 あらかじめ定められた就業規則がある場合、他の従業員と同様に適用されているか。
2 出勤簿等により他の従業員と同様に就労時間の管理がされているか。
3 賃金台帳等により他の従業員と同様の計算で賃金の支払いを受けているか。
4 事業主の確定申告で専従者給与として支払われていないか。

法人は理事長・家族専従者も厚生年金・協会けんぽの被保険者

「契約があれば厚生年金にも加入できる」という先の話は、この要件を根拠にした話のようです。上記のように就業規則に則って他の従業員と同様の取り扱いにした場合、健康保険および厚生年金保険に加入することができますが、あまり現実的な対応ではないでしょう。個人事業主である医師は、通常、国民健康保険または医師国保と国民年金の被保険者になります。

なお、これまで病院等で協会けんぽに加入していた場合、退職後の健康保険として「協会けんぽの任意継続」に移行することも可能です。保険料などを比較のうえ、選択された健康保険にお手続きをしてください。

ご承知の通り、法人であれば理事長や就業している家族は、職員とともに厚生年金と協会けんぽに加入することができます。しかし、この医療機関は法人化しないということなので、事業主及び家族は厚生年金と協会けんぽの被保険者になる選択肢はありません。

退職後の健康保険(日本年金機構)

舟越社会保険労務士事務所(舟越雄祐)