SNSなどの新興メディアと政治との関係は、近年の選挙では、それが与える影響の大きさが注目されています。
特に、「SNSを通じて情報を受け取る機会の多い若者」といった視点で「若者」の投票行動を説明しようとする言説がメディアでは多く取り上げられていますが、ペンライトデモなどの参加者は20~30代が半数近くを占めている(信濃毎日新聞4月20日)というのも現状です。
メディアが私たちに与える効果には、どのような特徴があり、私たちは何に着目すべきなのでしょうか。
メディアの「限定効果」
メディアがどのように人々に影響を及ぼすかについての研究は、1930年台のファシズム台頭期に始まります。
メディア史の観点からすると、SNSなどを含めたメディアそのものが与える影響力(効果)は限定的とする考え方があります。
それは、メディアが発信する情報を、受け手はそれらを鵜呑みにして全てを受容することはなく、自身の興味や関心のある内容を選択的に受け取ることで、自身の考え方を強化しようとする傾向があり、メディアの効果は限定的であるとする「限定効果論」です。
デジタル化とポピュリズム
もちろん、限定効果論でメディアの影響と人々の行動の全てを説明はできませんが、限定効果論で着目すべき点は、メディアの影響力を、情報に触れる私たちが、あらかじめ有している興味関心(価値観)への働きかけという点でメディアの特性を説明している点です。
こうした視点からすると、「SNS選挙」とも呼ばれる昨今の状況は、デジタル化の「見られたもの勝ち」「内容より見出し」といったポピュリズム的特徴を利用した、有権者が受容しやすいテーマ(排外主義や減税など)で、広範囲に興味関心を拾い上げようとする、限定効果の最大化が行われていると見ることが出来ます。
メディアは受け手の先有傾向を補強する作用があり、もともと持っている考えを増幅させたり、漠然とした思いを明確化させる点は、重要であると同時に、受け手のリテラシーや主体性が問われることになります。
デマやフェイクが受容される過程に注目
1938年にアメリカで放送されたラジオドラマ『宇宙戦争』は、火星人が地球に来襲したという設定で、ニュースのように実況風に状況を伝える臨場感のある番組でした。
リスナーの中には、これを実際の出来事と勘違いした人々がおり、後世の研究では、番組を実際の出来事と信じた、24才の男性が、火星人の襲来という「破局」を「解放感」として受け取ったという経験が紹介されており、注目に値します。
自分の能力に疑問を持ち、「生きていることがむなしくなる」という彼にとって、火星人襲来という「破局」は、自身の負っている責任や将来への不安からの「解放」だったのです。
『宇宙戦争』が示したのは、上記の男性のように、自身の心理状態や社会的・文化的な位置によって情報の理解が変わるということであり、格差など社会の文化的分断に注目する必要があるということです。
現代社会にデマやフェイクが蔓延する構造を考えるためにも、そうしたデマやフェイクの原動力となる、個人が抱いている不安や、現実世界へのフラストレーションが、どのような人々によって、格差や貧困などどのような分断から発生しているかを分析する態度が、私たちには必要となります。
事務局 中瀬
