医療機関の、1か月単位の変形労働時間制の導入には以下のメリットと注意点があります。
導入のメリット
従業員が10人以上は週40時間制を導入することができます。また、10人未満の小規模医療機関は特例の週44時間制の利用でスタッフの配置を診療時間に合わせることができます。
柔軟な労働時間設定
1か月単位の制度を採用することで、医療機関は労働時間を柔軟に調整でき、スタッフを診療ニーズに合わせて配置できます。これによって、診療の効率を向上させることができます。
残業代の削減
月間労働時間を労働基準法の週40時間制または特例の週44時間制にすることで、残業時間を削減し、経営コストを抑えることが可能です。これは特に、予測不能な状況での残業の減少に有効です。
スタッフの満足度向上
柔軟な労働時間制度は、スタッフのワークライフバランスを向上させ、モチベーションを高め、離職率の低減に役立ちます。スタッフが満足度向は、医療機関経営にとって不可欠です。
気をつけておきたいこと
1.1か月単位の変形労働時間制の採用方法
労使協定または就業規則(※)で、2に示した事項について定めてください。なお、締結した労使協定や作成・変更した就業規則は、所轄労働基準監督署に届け出てください。(※)常時使⽤する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出が必要です。
2.労使協定または就業規則などに定める事項
次の事項すべてを、定める必要があります。
①対象労働者の範囲
②対象期間および起算日
③労働日および労働日ごとの労働時間
④労使協定の有効期間
スタッフ合意の尊重を
労働基準法に準拠するために、労働時間を正確に記録することが重要です。また、制度導入に伴って就業規則の変更が必要ですので、スタッフの合意を得て、変更するための手続きを行う必要があります。
医療機関は患者の健康と安全において重要な位置を占めるため、労働基準法を順守することが非常に重要です。法定労働時間や残業に関する規定を遵守し、スタッフの権利を尊重しましょう。
新しい制度を導入する際、スタッフへの十分な教育とトレーニングも重要です。労働時間制度の変更に対するスタッフの理解促進は欠かすことができせません。
変形労働時間制は次善の策
総括すると、1か月単位の労働時間制を導入することで、医療機関は柔軟性を高め、コスト削減やスタッフの満足度向上を実現できます。ただし、法令順守や正確な記録の維持、スタッフへの教育が欠かせず、慎重に計画と実施を行う必要があります。スタッフとのコミュニケーションを重視し、適切な制度を築くことに留意しましょう。
変形労働時間制はほかに1年単位、1週間単位がありますが、あくまでも本来の労働時間は1週40時間。最近の若者は賃金よりも休みを求める傾向があります。職員の新規採用なども踏まえると、変形労働時間制はやむを得ないときの次善の措置と考えて対応する時代に来ているのかもしれません。