12月15日に長野反核医療者の会が、2024年9月にカザフスタンで被ばく者を取材したジャーナリストの小山美砂さんによる報告会を開催しました。
小山美砂さんは、広島で「黒い雨」に関する取材を進めてきたフリージャーナリストです。小山さんは、カザフスタンでは被害者に対する補償がどのように行われているのかについて力点を置いて取材をされました。
セミパラチンスク核実験場
カザフスタンは旧ソヴィエト連邦の構成国で、国内のセミパラチンスクに核実験場が設置されていました。ソ連は1949年の核実験成功以降、セミパラチンスクでは地上・空中・地下と、広島型原爆換算で1100発分もの核実験が1989年まで行われました。その結果、放射能汚染がカザフスタンだけでに留まらず、周辺国にも広がる事態となりました。
小山さんは核実験も訪れており、爆心地に残された鉄くずは現在でも4μSv/h(年間換算約35mSv)という、非常に強い放射線量を示していたということです。
実験場の周辺には村がいくつかあり、軍事機密であったことから生活する住民は被ばくの危険性を説明されていません。
周辺住民への核実験の影響
最も汚染された村の1つのサルジャール村では「60歳まで生きられる人が少ない」といわれるなど、核の被害を受け続けています。サルジャール村の住民は、「首吊り自殺をする若者が多い」「政府はアンフェアだ。薬代くらい支援してほしい」と話し、また核実験を経験したことで、今でも鼻血や骨の痛み、頭痛などに苦しめられています。
ある皮膚病を患う被爆者は、広島の被爆者をかわいそうだと思っていましたが、後になって自分も同じ被害を受けていたことを知り、ショックを受けたことを泣きながら語っています。カザフスタンでは、核実験被爆者への支援制度がありますが、サルジャール村には小さな診療所が1つしかなく、街から遠いこともあり、住民への医療体制は不十分な状態です。
政府のダブルスタンダード
一方で、カザフスタンは核兵器禁止条約(2021年発効)を批准し、国際的には核被害者への支援拡充を訴えています。小山さんは「国際的なアピールの前に、自国の被害者を助けてほしい」というカザフスタンの被爆者の声から、カザフスタン政府のダブルスタンダードといえる姿勢を取材で明らかにしました。
こうしたカザフスタン政府と、「唯一の被爆国」を公称する日本政府は、日本被団協の田中代表委員がノーベル賞授賞式のスピーチで「死者に対する償いは日本政府は全くしていない」と語ったように、その姿は重なって見えます。
事務局 中瀬