2023年度の監督指導結果を労働基準局が公表

厚生労働省では7月25日に、2023(令和5)年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめて公表しました。

監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり 80 時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等を対象としています。

1.法違反の状況

2023年4月から2024年3月までに、26,117事業場に監督指導を実施し、21,201事業場(81.2%)で労働基準関係法令違反が認められています。主な法違反としては、違法な時間外労働が11,610事業場、賃金不払残業が1,821事業場、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが5,848事業場となっています。

監督指導結果のポイント

主な違反内容

①違法な時間外労働
労働基準法第32・40条違反(36協定なく時間外労働を行わせていること、36協定が無効なこと又は36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせていることにより違法な時間外労働があったもの。)、労働基準法第36条第6項違反(時間外労働の上限規制)など。
②賃金不払残業
労働基準法第37条違反(割増賃金)のうち、賃金不払残業。
③健康障害防止措置
労働安全衛生法第18条違反(衛生委員会を設置していないもの等。)、労働安全衛生法第66条違反(健康診断を行っていないもの。)、労働安全衛生法第66条の8違反(1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの。)、労働安全衛生法第66条の8の3違反(客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないもの。)等。

2.主な健康障害防止に関する指導の状況

(1)過重労働による健康障害防止のための指導状況 
監督指導を実施した事業場のうち 12,944事業場に対して、長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等の過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導。

過重労働による健康障害防止のための指導事項別事業場数

(2)労働時間の適正な把握に関する指導状況 
監督指導を実施した事業場のうち、4,461事業場に対して、労働時間の把握が不適正であるため、厚生労働省で定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導。

労働時間の適正な把握に関する指導事項別事業場数

3.監督指導により把握した実態

(1)時間外・休日労働時間が最長の者の実績 
監督指導を実施した結果、違法な時間外労働があった11,610事業場において、時間外・休日労働が最長の者を確認したところ、5,675事業場で1か月80時間を、うち3,417事業場で1か月100時間を、うち737事業場で1か月150時間を、うち35事業場で1か月200時間を超過。

監督指導実施事業場における時間外・休日労働時間が最長の者の実績

(2)労働時間の管理方法 
監督指導を実施した事業場において、労働時間の管理方法を確認したところ 1.878事業場で使用者が自ら現認することにより確認し 10,213事業場でタイムカードを基礎に確認し、5,525事業場でICカード、IDカードを基礎に確認し 1、6,870事業場で自己申告制により確認し、始業・終業時刻等を記録。

監督指導実施事業場における労働時間の管理方法

労働者が精神的、肉体的不調を起こすことなく働くために、長時間労働のない職場づくりは欠かすことのできない課題です。違反した事業場を他山の石とせず法律、ガイドラインにのっとった事業場運営に努めてください。

厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11 月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。