社会保険の加入対象拡大について

これまで短時間労働者(いわゆるパート・アルバイト)の社会保険の加入には「事業所規模」や「賃金」などの要件が存在し、加入対象が限定されていました。しかし、2025年の法改正により、27年10月から50人以下の事業所にもパート職員の社会保険加入が義務化される予定です。

この制度により、小規模でもパート職員の労働条件に応じた社会保険の適用が求められるため、経営者は制度について十分理解し、準備を進める必要があります。規模や賃金に関わりなく、職員が20時間以上働く場合、特定の条件を満たせば社会保険への加入が求められるため、事業所は加入者の把握と必要な手続きに注意を払う必要があります。

改定のポイント

改定のポイントは大きく次の3つです。
①事業所規模要件の縮小・撤廃
従来、「職員数51人以上」の事業所で働く短時間労働者のみが対象でしたが、今後は段階的に要件が引き下げられ、最終的には事業所規模にかかわらず、週20時間以上働く人は社会保険に加入することになります。これにより、小規模医療機関で働くパート職員も広く対象となります。
②収入要件の撤廃
これまで「月額8.8万円以上(年収106万円以上)」という条件があり、いわゆる「106万円の壁」が就業調整の要因とされていました。改正後はこの要件が撤廃され、週20時間以上働けば収入額にかかわらず加入対象となります。
施行時期は法律公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを目安に判断されるとしています。
③個人事業所の適用拡大
現在、「常時5人以上の職員を使用する法定17業種」の個人事業所のみが強制適用でしたが、改正により業種を問わず、5人以上の職員を雇用するすべての個人事業所が対象となります。

社会保険加入のメリット

社会保険に加入すると、基礎年金に加えて厚生年金を受け取れるため、将来の年金額が増えます。また、健康保険により病気やけが、出産で休業した際に収入が保障されるなど、生活の安定にもつながります。短期的には保険料負担が発生しますが、一方でより安心を得られる制度となります。
また、新たに加入対象となる短時間労働者の負担を和らげるため、職員数50人以下の事業所などで働く人びとを対象に軽減策も用意されています。

扶養との関係

週20時間以上働けば、社会保険に加入することができるので、その場合、扶養から外れて保険料を負担しますが、将来の年金額増加や医療・休業保障の充実などのメリットがあります。なお、週20時間未満は原則加入対象外で、扶養のまま働くことが可能です。ただし、年収130万円を超えると扶養から外れる点は注意が必要です。

加入者の増加による負担に早めの準備を
今回の法改正で、社会保険の加入対象者は、大幅に拡大されます。事業所規模や賃金に左右されず、週20時間以上働く多くの短時間労働者が社会保険に加入することになり、将来の年金や医療保障が充実します。

しかし、一方で、事業所や職員に新たな保険料負担が生じるため、支援策の活用とともに働き方や雇用管理を見直すことが求められます。制度の段階的な拡大を見据え、その理解と早めの準備が必要です。

舟越 雄祐(協同組合元事務局長)