映画『ヒンド・ラジャブの声』
イスラエルが支配を続けるパレスチナ・ガザ地区では、日本ではあまり報道されていませんが圧倒的な軍事力を持つイスラエル軍によって、ガザの人々は日常的に攻撃にさらされ、命を落としています。
先月の国連総会では、こうしたイスラエルのジェノサイドに抗議の意を示すため、ネタニヤフ首相の演説の際に多数の各国代表団が退席しました。
ヒンド・ラジャブ殺害事件
2026年8月19日、イスラエル軍警察が、ガザでのある事件を刑事捜査することを決定しました。
ある事件とは、2024年1月29日、ガザ北部を車で避難中のヒンド・ラジャブ(当時5才)たち家族と親戚の合計7人が、イスラエル軍の銃撃を受けヒンドと従姉以外の5人が殺害され、車内に取り残された彼女たち2人も後の銃撃で殺害されたというものです。
殺害されるまでの間、ヒンド達は車内から、家族や赤新月社に電話で救助を求めます。
赤新月社のスタッフは救急車を向かわせるよう手配しますが、西岸地区からガザ地区へのルート確保をイスラエル軍と調整する手続きのため、すぐに向かうことができません。
通報から3時間後、許可が下り、救急車は出発しますが、その後、ヒンドと従姉、救助に向かったスタッフとも連絡がとれなくなり、通報から12日後、300発以上もの弾丸が打ち込まれ穴だらけになった車の中からヒンド達7人と、その近くで救助に向かったスタッフ2人の遺体が発見されました。

アパルトヘイト法の下で生きること
ヒンドが助けを求める数時間の通話音声は公開され、世界中に大きな衝撃を与えました。そして、2025年に映画『ヒンド・ラジャブの声』が公開され、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞しています。
ジャーナリストの安田菜津紀さんが『ヒンド・ラジャブの声』のカウテール・ベン・ハニア監督にインタビューを行っています。
監督は制作にあたり、「当初、周囲の多くの人たちから『これは戦争についての映画なのだから、戦車や銃、流血を見せるべきだ』と言われました。しかし、私は露骨で生々しい暴力を描くことに関心のある監督ではありません。そうした直接的な暴力描写は好まず、構造的な暴力に関心があるのです」と語りました。
ガザは戦火の中にあります。しかし「命乞いをする幼い子どものもとに救急車を派遣することすらできない」のは、“戦時だから”というだけではありません。
私たちが問題として認識すべきなのは「イスラエルの占領体制がパレスチナ人に対して意図的に設計・課している法やシステムによる暴力」なのであり、監督はこの映画で「アパルトヘイト法の下で生きること、占領の隠された側面の一つ」を描いているのです。
意図的に標的にされるパレスチナの子どもたち
本年6月の国連報告では、2023年10月以降だけでも、イスラエルの攻撃によるパレスチナ人死者は7万3千人あまりで、ヒンドを含めた子どもの死者は約3割の2万1280人以上です。
『ヒンド・ラジャブの声』は、日本国内では9月4日から各地で公開中です。
事務局 中瀬
*監督のインタビューは 、NPO法人「Dialogue for People」のWebサイト(https://d4p.world/38150/)を参照