社会保険の加入対象が従来の従業員数101人以上から51人以上の事業所にまで広がります。パートタイムやアルバイトとして働いている人も、一定の条件を満たせば、厚生年金保険や健康保険などの社会保険の加入対象となることができます。
1.社会保険の加入対象は?
日本に住む20歳以上の人は、公的年金制度(国民年金や厚生年金保険)や医療保険制度(健康保険など)に加入することになっています。このうち、働く人が対象となるのが、厚生年金保険や健康保険といった「社会保険」です。フルタイムで働く人だけでなく、一定の条件(対象となる従業員の要件)を満たすパートやアルバイトも社会保険の加入対象で、次のように、段階的に対象となる事業所の範囲が拡大されます。
従業員のカウント方法
フルタイム並びに週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上(正社員か否かは問いません。)
2024年10月から社会保険の加入対象になる人
以下全てを満たす人が対象になります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8.8万円以上
・2か月を超える雇用の見込みがある。(フルタイムで働く人と同様)
・学生ではない。
・従業員数51人以上の事業所(改訂前は従業員数101人以上)。
なお、従業員数「50人以下」の事業所等においても、従業員と事業所等が合意することで、51人以上の事業所等と同じ加入要件にすることができます。
2.加入のメリット~年金の増加、事業所が保険料の半分を負担
厚生年金保険・健康保険(社会保険)に加入するメリットには、大きく次の4つがあります。
(1) 将来もらえる年金が増加
厚生年金保険に加入すると、全国民共通の基礎年金に加えて、在職中の給料の額に基づいて計算される「報酬比例」の厚生年金を受け取ることができます。
(2) 障害がある状態になった場合なども、より多くの年金を支給
厚生年金保険の加入期間中に、万一、障害がある状態になった場合、障害基礎年金のほかに障害厚生年金が支給されます。また、障害基礎年金は障害等級1級又は2級の場合に支給されますが、障害厚生年金は障害等級3級の場合も支給されます。
また、万一お亡くなりになった場合も、遺族に遺族基礎年金のほかに遺族厚生年金が支給されます。
(3)医療保険(健康保険)の給付も充実
医療給付の内容は、各医療保険制度共通で、基本的に本人・家族で差はありませんが、一部の現金給付(傷病手当金、出産手当金)について、差があります。健康保険に加入していると、病気やけが、出産などで仕事を休まなければならない場合には、傷病手当金や出産手当金として、賃金の3分の2程度の給付を受け取ることができます。
(4) 事業所が保険料の半分を負担
国民年金や国民健康保険では被保険者本人が保険料を全額負担しますが、厚生年金保険や健康保険に加入した場合には、保険料の半分を事業所が負担します。
3.必要な手続
今回の適用拡大によって新たに厚生年金保険や健康保険に加入する人は、基本的に、ご自身の勤め先の事業所を通じて手続きを行うことになります。ただ、それまで加入していた国民健康保険や、配偶者の健康保険における被扶養者の資格喪失などの手続きは、別途ご自身で行う必要があります。ご注意ください。
求められる診療報酬の改善と社会保険加入の軽減措置
従業員の確保にとって待遇改善は必要です。全業種の中小企業への社会保険加入の負担軽減措置が求められます。また、医療機関においては、診療報酬の実質的なマイナス改定が続く中、負担をそれぞれの経営努力に求めることは無理があります。医療保険制度を守る上においても診療報酬の改善は喫緊の課題です。
詳細は厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイトで紹介しています。