身近に感じる温暖化

春の季節、毎年山菜採りを楽しみにしています。タラの芽、コシアブラ、コゴミ、山ウド、ワラビなど、食べきれずスタッフや知人にお配りできる量を採ります。山菜採りは、「何処へ行くか」より「いつ行くか」が大切です。

ほんの2、3日違いでまだ芽吹いていなかったり、既に大きくなりすぎていたり。芽吹きの時期はその年の陽気にもよるので毎年同じではありません。確実なのは、この10年くらい、徐々にその時期が早くなっていることです。

地球温暖化の影響

私がエリアにしている安曇野の里山も以前は5月の連休がベストシーズンだったのですが、今年は4月23、24日くらいから採れ始め、大方4月中にタラの芽やコシアブラは終わってしまい、5月の連休は標高を上げなければなりませんでした。

背景には地球温暖化の影響があるのでしょう。温暖化は山菜の芽吹きの時期ばかりでは無く植生にも変化をもたらしています。かつては安曇野の里山では全く見かけなかったヒイラギやシラカシが自生し始めました。ヒイラギやシラカシは暖地性で植物図館などには「関東以西に分布」などと記載されています。

“名産地”のいま

このように温暖化の影響をまっ先に受けるのが植物です。従って農業分野でもその影響は大きくなりつつあります。安曇野では秋の気温がなかなか低下せずリンゴの色付きが悪くなったりして品質にも影響しているようです。40年前は安曇野のフジリンゴが全国品評会で1位になったこともありましたが、近年は岩手県のリンゴの方が評価が高いようですし、今では北海道でもリンゴが生産されています。

リンゴばかりではなく、葡萄も山梨県が一大産地でしたが、甲府盆地が暑くなりすぎ夜間の気温が低下しないため糖度が上がらず、ワイン用葡萄では長野県や山形県の方が良い葡萄が生産されるようになってしまいました。そのため甲府のワイナリーでも、長野県や山形県から葡萄を仕入れるようになっているそうです。

気候変動は私たちの生活を直撃

問題は、この温暖化の影響が地球規模で気候変動をもたらしていること。地中海沿岸では、夏に高温・干ばつが続き、オリーブが減収になったことでオリーブオイルが高騰しています。アメリカの穀倉地帯やブラジルでも、小雨高温で小麦や大豆、トウモロコシなど穀物価格が高騰しています。

これは食料自給率の低い日本の食品価格に直結し、ひょっとすると、そのうちお金を出せば買える時代は終わるかもしれません。自分の身を守るのは、自給型農業を実践するしかありません。


布山 徹