協同組合を考える 現代的な協同組合のあり方

先月号では、レイドロー報告(1980)から、主に「協同組合の危機」をご紹介しました。
組合の運営にあたっては、専門家だけではなく、一般の組合員や組合が存在することによって影響を受ける地域住民も含めて活動のプランニングを行う必要があるという内容です。
こうした地域社会への貢献という視点が必要となるのは、協同組合はもともと相互扶助や、利益および損失の公正な分配、搾取のない社会、さらにユートピアの追及といった考え方でスタートした組織だからです。

 

4つの優先分野

レイドロー報告では将来の組合像で4つの優先分野
・第一:食糧(世界の飢餓の 克服)への協同組合の貢献
・第二:労働の管理
・第三:消費者協同組合に 求められる姿
・第四:協同組合地域社会 の建設
を示しています。
第一分野は協同組合が最も成果をあげてきたのが食・農の分野で、これをさらに発展させること。
第二分野はワーカーズコープのような労働の自主管理。
第三分野は停滞する消費者協同組合をどう運営していくか、といった内容です。
注目したいのは、第四分野の協同組合地域社会の建設です。
具体的には、スペインのモンドラゴンのような様々な協同組合の連合体や、日本では農協(食糧の生産・小売り・信用事業の総合的な協同組合)の活動がレイドロー報告に提示されています。

 

自主管理の重要性

4つの優先分野に共通するポイントは「自主管理」だと言えます。
たとえば、現状では生産手段や材などの資本は資本家に独占され、あらゆるモノが商品化されていますが、協同組合は生産の段階で消費者である組合員を参加させ、自分たちで管理を行います。
日本でも活動している労働者協同組合(ワーカーズコープ)は、従来の経営者と被雇用者といった関係ではなく、労働を自分達で管理し、組合員に分配する協同組合です。
民主主義による運営が前提となる協同組合は、こうした自主管理に適した組織なのです。

 

保険医協同組合の課題

本紙8月号で紹介した、斉藤幸平『人新世の資本論』(2020)でもスペインのモンドラゴンでの2012年の経済危機への対応が紹介され、生産・労働・信用事業などの自主管理により、他地域よりも失業者の発生を少なくできたことが、自主管理の好事例として評価されています。
レイドロー報告は現代の組合運営の基礎となる考え方を提供した画期的なもので、報告から40年が経ち、より洗練された理論と実践を学ぶことができます。
保険医協同組合には、地域社会の中での立ち位置の確立が求められています。