最近の患者トラブルを学ぶ【医療安全講習会】

法整備はまだ途上 難しい適切な対応

11月28日(日)に尾内康彦さん(医療法人聖和病院経営管理室顧問)を講師に、最近の医療機関トラブルの特徴と今後の対応方法を学ぶ医療安全講習会を開催し、29医療機関の参加がありました。

講師の尾内康彦さんは、全国で医療機関トラブルをテーマにした講演を行われており、『日経ヘルスケア』でも連載を持たれています。当組合では直近で、2019年の総代会記念講演会で、社会の構造的な問題と医療機関トラブルの関連やネットの書き込みの対処法などについて講演。

今回の講演会では、ネット上のトラブルをメインに、その対応事例とポイント、トラブルに発展する患者の類型についてお話いただきました。現在、尾内さんへのネットの書き込みに関する相談は増加しており、前回(2019年)の講演会よりも細かく分類された対応方法が示されました。
また注目すべき事例として、新聞で報道されたように、ネット関連業者による口コミのなりすまし投稿と、その業者が削除を有料で請け負うというマッチポンプの「ビジネス」が行われていることを紹介。特に医療機関は狙い撃ちにされている状態にあり、決して他人事ではないと尾内さんは警鐘を鳴らします。

口コミへの対応・応召義務の考え方

口コミに対しての対応方法は、情報開示や削除依頼、返信機能や内容証明郵便を使う、警察に相談するなど場合によって変わります。また、プロバイダ責任制限法が見直され、今後は誹謗中傷を行った情報発信者の特定に要する時間や費用の短縮が見込まれますが、誹謗中傷そのものを防止する訳ではないため、やはり書き込まれた側の対応は必要です。

また尾内さんがかねてから発信していた応召義務については、2019年12月25日の「医政発1225第4号」通知で、診療の求めに応じないことが正当化される場合の考え方に「患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係」が新たに記されました。
医療機関側の信頼関係構築努力がにも関わらず、患者側の行為により信頼関係が築けず適切な医療行為が期待できない場合には、診療の拒否が正当化されると尾内さんは結論づけます。

参加者からの声

参加者からは、「具体的な事例が多く参考になった」「今後発生するかもしれないトラブルに対し心構えになった」「接遇だけでは対処しきれない現状であることを知った」などの感想が寄せられました。
また今回は2時間では収まらない内容であったため、「もっと詳しく話を聞きたい」という声もあり、組合では新たな講演会を設けることも検討していきます。