協同組合を考える レイドロー報告

1980年に開催されたICA(国際協同組合同盟)の 第27回モスクワ大会でレイドロー博士によって報告された「西暦2000年における協同組合」は、その後の協同組合運動に大きな影響を与えた報告で、一般に〝レイドロー報告〟と呼ばれます。
当時、日本では高度経済成長は終わり、世界的に経済は停滞傾向、そしてイギリスではサッチャー政権の誕生(1979年)で現在に続く新自由主義の始まりと言える時期だと言えます。
そうした時代状況にあって、20年後の2000年までに世界の協同組合はどのような道を歩むことができるかを同報告は考察しています。
すでにレイドロー報告の発表から40年以上が経過していますが、現在の協同組合運動を考える上で今なお意味のある指摘が含まれています。

協同組合の危機

レイドロー報告では歴史上に協同組合の危機は3つあるとしています。
1、2の危機は信頼と経営で、どちらも草創期や初期のものでした。
第3の危機は、〝思想的な危機〟であるとされ、これは現在でも多くの組合が直面する問題です。
本文では「もし協同組合が、他の企業と同じように商業的な意味で能率をあげ成功するという以上のことは何もやらないとしたら、それで十分なのだろうか? そしてもし、協同組合が他の企業と同じような事業の技術や手法を使うなら、組合員の支持と忠誠を得るためには、それで十分だろうか?」と書かれています。
協同組合は事業体としての活動だけでは組合員の支持や忠誠は得られず不十分であるとしているのです。
では、協同組合には何が必要になるかというと、協同組合組織や活動をプランニングする際に、専門家だけでなく、一般の組合員や素人も、その過程に参加し、近隣や地域社会に住む人々の間で協同組合の活動が行われるため、プランニングはそこでも行わなければならないとして、組合員参加や地域社会への視点が必要になるとしています。

レイドロー報告を実践

こうした考えを実践しているのが本紙先月号で紹介した生活クラブ生協で、生産者と一般の組合員との交流や意見交換(時には監査のようなことも)を行い、素人(組合員)がプロ(生産者)と対話する機会を確保しています。(次回に続く)