思い立って京都に行った。夕方の勤務を終え、高速を飛ばす。約240Km 。京都南I.C.近くのホテルに車を入れる。食事内容がよく、サウナ、洗濯機まで付いているお気に入りのホテルだ。
京都・奈良の修学旅行のときは夜の女性同士の恋バナしか楽しみがなかったが、50歳を過ぎるようになってからは、「そうだ 京都、行こう」のキャンペーンにつられるように、好んで京都を訪れた。そんなおり、職場旅行の案内に、京都ツアーがあったとき迷わず申し込んだ。が、最小興行人数に満たず流れた。今回はその雪辱戦だ。
伏見・宇治を満喫
伏見稲荷と平等院は絶対に行こうと思っていた。伏見稲荷は流れた職場旅行のコースに入っていて、千本稲荷に神秘的なものを感じていたし、旅行案内書で阿字池に映る平等院の写真を見て幻想的に感じたからだった。ところが、ホテルの居心地が良すぎて、出発が11時頃になってしまっていた。
まずは、伏見稲荷。股関節変形症の持病を持っているので、他の人の倍かかる。あこがれていた千本鳥居をくぐり抜ける。稲荷山山頂まで行こうか、途中の奥の院までにしようか。
結局、ほうほうの体で山頂の一ノ峰にたどり着く。さて、降りたら平等院だ。ところが連れが、「源氏ミュージアムに寄ろう」と言う。ミュージアムも心惹かれるものもあったが、間に合うか!
着けた!阿字池の水が濁っていて水面に映る平等院が期待外れだったにせよ、鳳凰堂の拝観時間に間に合わなかったにせよ、その他のコースをすべてまわり、十円玉を片手に記念写真を撮り、お土産まで買うことができた。締めくくりに、平等院の近くで、懐石料理のコース料理を味わった。
「そうだ、両方やっていいのだ」ふとひらめいた。
あの日のひらめき
54歳にて医師生活をスタートした私は、初期研修、後期研修、専門医習得というような一般のコースを取ることができずに七つの病院をさまよう中で、医師としてこれからどう進むべきか迷っていた。高校時代にひらめいた、自然治癒力を活かした医療をしたいという動機を考えれば家庭医をめざすべきだろうし、一方で家庭医コース修業時代に出会った内視鏡業務にも惹かれていた。私の周囲の医師は、そもそも専門医を目指すだけで無謀だと言わないばかりの反応だった。
今回の京都へのドライブでは、足が悪い自分が、出発時間が遅かったにもかかわらず、おまけまでつけてやりたいことを全部することができた。医師になるのが遅く、一つをこなすにも時間がかかる自分にとって大吉に思えた。「無謀と思えることでも、やりたいと思ったことは全部やっていいのだと・・」
思い描いた未来を引き寄せる
認定内科医と内視鏡専門医を取ることができ、縁あってこの4月飯田で開業することができた。一般的な内科診療の他に、上下内視鏡、肥満外来、禁煙外来を行っている。まだまだ手探りの状態だが、あの日のひらめきが現実になって来ているのを感じている。
エルムクリニック院長
倉橋眞理