コミュニティの中の協同組合

全国保険医協同組合連絡会では、11月18日(土)に、関西大学商学部の杉本貴志教授を講師に、協同組合の歴史を振り返り、新たな協同組合のあり方を考える、事務局向け学習会を開催しました。

組合員の皆様は、11月の国連総会において、2025年が国際協同組合年に決定したことをご存知ですか? 日本国内では、ほとんど報道もなく関心が低いのですが、現在、世界での協同組合の評価は高く、国連が国際協同組合年を決議したのは、2012年に続いて2度目です。 また、2016年にはユネスコ文化遺産にも登録されています。
これらは特定の協同組合の活動を評価したものではなく、世界中で行われている協同組合の活動・取り組みそのものが評価されてのことです。

今日に引き継がれロッチデール原則

今日の協同組合は、18世紀中ごろにイギリスで設立された、ロッチデール公正先駆者組合の取り組みにルーツを持ちます。民主主義や教育の重視を盛り込んだ、ロッチデールの組合運営方法はロッチデール原則と呼ばれ、現在の協同組合原則は20世紀の間にいくつかの原則を追加して成り立っています。
中でも、経済の分野で「1人1票」という民主主義の原則を取り入れているのは協同組合だけで、非常に重要な意味を持ちます。

他者が置かれた状況への関心をもつこと

近年、協同組合が世界で注目を集めているのは、フェアトレードなど、特定の人だけの利益を追求するのではなく、組合が提供する商品やサービスに関わる全ての人々に配慮した取り組みを行っていることです。実際に、2012年の国際協同組合年にイギリスで開催された協同組合の万博(日本は不参加)の中で、最も目立っていたのがフェアトレードのブースだったほどです。消費者中心のメリットである「安心・安全」の先へ、世界の協同組合は歩みを進めています。一方で、日本の協同組合は、こうした世界の動向から取り残されつつあります。

日本における協同組合の問題は、それぞれの組合の設立が個別の法律に規定され(消費者=生協法・農業従事者=農協法)、一つの利害関係者だけによる組合の利用しか想定されていないところにあります。このため、多様な立場から社会や世界の問題を考える協同組合を作ることができません。

現状では、大阪で協同組合間協同による、生協や農協など異なる協同組合が連携をし、さらに赤十字なども加わって、コミュニティの多様な要望に応えられるよう態勢を整える取り組みが開始されています。こうした取り組みを進めながら、人々のインフラの役割を果たせる総合的な協同組合の設立のため、社会的な体制整備が必要です。