変貌する医療機関トラブル

去る12月17日(日)に、長野県保険医協同組合では尾内康彦さん(元大阪府保険医協会参与)を講師に、医療安全管理講習会を開催しました。受講者は全てオンラインで参加し、尾内さんが紹介したコロナ禍を機に増加傾向にあるネット上でのトラブルとその対応の事例に耳を傾けました。

尾内講師

総務省の相談センターによる公式統計では、ネット上の誹謗中傷対応の相談件数は、2022年で249件と、5年前の倍近い件数となっており、しかもこれは氷山の一角に過ぎない数字であると思われます。尾内さんも相談事例の増加から、患者トラブルの中心が対面からネット上へとシフトしつつあるとして、トラブル対応の技術もそれに合わせて変化していく必要があると話していました。

ネットの悪質書き込みへの対応方法では、内容があまりにひどく、患者の特定もできている場合は警察を利用する方法や、「オーナーからの返信機能」を使用して対応する方法を尾内さんは紹介します。「オーナーからの返信」は、ある口コミに対して院長などが回答できる機能ですが、悪質書き込みに対しは、冷静に筋道を立てた反論を、目立つよう3倍程度の文量で作成することで、投稿者が口コミを全面削除したり、投稿者の悪意を薄められる効果を持ちます。

患者を装う悪質な業者の書き込み

最近の悪質書き込みの中には、業者が患者を装って書き込みを行い、それを削除するのに作業料を要求するという、マッチポンプのような手口があります。そのため、書かれた側からすると全く身に覚えのない事例に振り回されてしまうことになりかねません。

現在、ネット上での誹謗中傷への法的対応は、プロバイダ責任制限法などがようやく改正されるに留まり、被害を直接防ぐことはできません。こうした状況の中、悪質書き込みを削除してほしい場合、サイトの管理者へ向けて削除要請を行うことになりますが、ハンドルネームでの書き込みでは発信者を特定できないため、弁護士も対応には及び腰となることもあるといいます。

今回の尾内さんのお話しでは、実例に即した話が多く、「分かりやすかった」という感想が多く寄せられています。講習会の様子は組合ホームページで配信しますので、最新のトラブル事例とその対応方法が気になる方は、組合事務局まで視聴申込をしてください。