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事件の衝撃に流されないように

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2022年7月8日(金)に安倍元首相が銃撃されるという、たいへんショッキングな事件が起こりました。この事件は現在捜査が続けられ、公判もまだ行われておらず、真相究明の途中です。現時点の警察発表による容疑者の供述では、動機は思想や政治信条ではなく、母親が信仰していた宗教への恨みと、その宗教と安倍元首相との繋がりがあると考え事件を起こしたとされています。

ドイツの新聞の指摘

海外メディアによる報道で、事件と参院選後の社会について考察した興味深い記事かあります。『南ドイツ新聞』のトーマス ハーン東京特派員による7月12日の論説 記事「Dunkle Träume」(※1)では、「失うものは何もないと感じてフラストレーションを抱えていた」容疑者による事件で、日本社会が以前から抱える問題が浮き彫りになったと指摘。

ハーン記者は、警備上の問題を認めながら、その点に注目しても「普通の日本人が銃を自作し、わざわざそれを持って集会に出かけ、人をためらいもなく撃ち殺すことの説明はつかない」としています。そのうえで、原因は日本社会のなかでケアが行き届いていないことにあるとし、「人と違ったり、成功できなかったり、ルールやヒエラルキーに適応できない人」は、「急速に、かなり孤独な状態に陥ってしまう」。しかし、「自民党が率いる与党は伝統的に、社会問題や分断をほとんど気にかけていない。そのため、社会的な冷たさが生じ、生きる意味を見失ってしまう人が少なからず出てくるし、そのなかから危険な思想を持つ人が出てくることもある」と指摘します。
※1:『南ドイツ新聞』ホームページおよび、Webサイト「COURRiER JAPAN」の「独紙が分析する、安倍晋三亡き後の”あまり明るくない”日本の展望」参照

日本社会の実相は…

このような分析は、真相究明とともに間違いなども発見されるでしょうが、「社会問題や分断」が放置されているという指摘は、私たちは重く受け止める必要があると思います。実際に、今回の事件では、SNS上で「容疑者は在日外国人である」などの誤った情報が多く拡散されました。言うまでもなく、ある一定の属性を持つ人に対して差別を行うのはヘイトですが、それにも関わらず、こうしたSNS上の投稿が大量に行われているのは、私たちの社会の危うい側面を示していると言えます。

社会の問題に目を凝らす

『南ドイツ新聞』の記事と似た指摘は、過去に当組合主催の講演会で尾内康彦さんも行っていました。2019年の講演で、トラブルの増加と近年の特徴を、新自由主義・自己責任論の蔓延で、人々の社会的つながりが薄れたことが原因となり、生きづらさのストレスのはけ口をどこかに求めていると分析しています。新自由主義路線の30年余りで、格差・貧困の問題や、社会の分断は一層大きくなっています。個別の問題とともに、「生きづらさ」を作り出す社会の構造そのものを見直す事が求められます。

事務局 中瀬

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